「海に会うか?」
さぶりーがオナベになった3日後、病院にやってきたリーダーが言いました。
「あったりまえしょやっ!」
一も二も無くスリッパのまま屋外二階の駐車場へ急ぎます。
この時ばかりはキツイ階段もなんのその!久し振りに可愛い我が子に会えるんですもの♪
たくさんの差入れを持ってわざわざ見舞ってくれた柴吉家とコウメ家。ありがとう!
入院前日、何かを感じ取ってか用意をしていたさぶりーにペッタリコとくっついて片時も離れようとしなかったお嬢。
そんな君の事だから、会えばさぞかし喜んでくれるだろう
「海、海、元気にしてた?」
後部座席にちょこんと座っているお嬢に、思わず窓ガラスを軽く叩いて声を掛けました。
すると、視線を合わせた途端ブルブルッと震え、なぜか目を逸らすではありませんか。
怪訝に思いすぐさまドアを開けた私。そんな私から顔を背けると、海は緊張した面持ちでその場に固まっています。
そしてリードを付け車から降ろされたお嬢は、寄って来るどころかあさっての方を見るばかり。。。
「お?さぶりーを忘れたのか?
もう、すっかりリーダーッ子になっちゃったなぁ♪」
リーダーだけはやけに嬉しそう。…おいおい。
しばらく家を空けた私を、怒ってるのか、捨てられたと思ってすっかりいじけてしまっているのか…。
その日はそんなこんなであっという間の寂しい逢瀬でした。
ところが翌日、リーダーから話を聞くと-----
それまで散歩から帰る度にキュンキュン言いながら家中何かを探し回っていた海が、それを一切しなくなったというのです。
更に買い物から帰宅したリーダーに対し、いつもなら玄関へすっ飛んで出迎えるところを…
「お帰りー」
…な、何はともあれ、
急にいなくなった群れの一人に会えた事で、海はすっかり安心したんでしょうね。
無事退院を果たした2月4日。
「やっと帰ってきたね」くらいの7割程度の喜びの出迎えでしたが、それでも耳だけはしっかり垂れっ放しな海でした。
当日の午後、リーダー達のベッドにもぐって熟睡中-----
それにしても、滅多に振らない尻尾をこの時ばかりはぷりぷりっと振って元気に出迎えてくれると思いきや、さぶりーに対するあの悲しいまでにツレナイ態度…。
確か二年前、リーダーが入院したり長期出張した時には、久々に会えた時のお嬢様の喜びようったらハンパじゃなかったのに…。
時折家を空ける人間と、常に家にいるはずの人間がいなくなるのとでは、たぶん海にとって何かが違うらしいです。
結構演技派?というか、変に人間っぽいぞ、お嬢。