ブローディー
「安楽死を…」と、一時は獣医にまで見放されたブローディー君。発病した時の悲しみ、カートセラピーによって病状を克服した様子などを飼い主さんが自らまとめあげて下さいました。愛情溢れるブローディーストーリーをご紹介いたします。
■ブローディーとの出会い■
薄汚れた犬がハイウェイを渡ろうとしていました。急いで車を横付けすると、その犬はポンと車に飛び乗ってきました。首輪はつけていましたがIDはなく、2週間ほどあらゆる手段で飼い主を探しましたが結局見つかりませんでした。「きっとこの犬を助ける運命なんだ」と私は感じ、ブローディーとの生活が始まりました。
しかしそれは大きな間違いでした。父がガンで緊急入院し、介護のため病院に通うようになりました。ブローディーを連れて行くと、彼はまるで特別な任務を果たすかのように父のベッドの横にチョコンと座り、父だけでなく同室の患者さん達も癒してくれました。1ヵ月後父は亡くなり、私はブローディーの毛に顔を埋めながら夜通し泣き続けました。ブローディーはただ静かにそれを見守っていてくれました。時々自分の足を私の肩にかけ、まるで私を抱きかかえてくれるかのように。人生の中で一番辛い時期でしたが、ブローディーが側にいてくれたために乗り越えられました。そう、我々がブローディーを助けるのではなく、彼が私を助けるために私の所に来てくれたのです。
その後もブローディーは常に私を支え続けてくれました。悲しい時は一緒に泣き、楽しい時は一緒に笑いながら。
■発病■
2003年3月8日、裏庭の雪だまりを登っている時にブローディーがクンクン言い始めました。名前を呼ぶとこちらに向かってこようとはするものの、足が雪の中に埋もれているような感じでした。再びキュンキュン言ったかと思うと突然倒れ、車道に転がり落ちてきました。心臓が止まりそうに驚いた私はブローディーを家の中まで抱えていきました。全く起き上がろうとしない彼の姿を見て、私は更に恐ろしくなりました。土曜の夕方でかかりつけの獣医が閉まっていたため、30分離れた救急病院に連れて行きました。
診断の結果重度のFCEM・繊維軟骨 性栓塞(Fibrocartilaginous Embolic Myelopathy *軟骨のような物質が血管中に詰まって起こる急性脊髄梗塞で、4脚全てが影響されていると判明しました。とりあえずステロイドが処方されましたが見通しは全くたたず、とにかく経過を見守るしか方法がないと言われました。ブローディーを家に連れて帰り、私は彼のために出来る事は全てやろうと心に誓いました。とにかく頭とシッポしか動かないので、床ずれが起きないように1時間ごとに体をひっくり返し、スポイトで水を飲ませ、手で食事を与えました。
1週間経って状況は更に悪くなりました。顔と前脚が激しくけいれんし、あまりにも歯がガチガチと強くあたったせいで唇が病変しました。獣医にはステロイドの禁断症状かもしれないと言われました。静脈注射をされ、2〜30分で良くなると言われたにも関わらず全く良くなりませんでした。ブローディーにこれ以上不要な痛みを与えたくない!でも…でも…私は重要な決断を下さなければいけませんでした。その時私は病院でブローディーと、心と心の話し合いをしました。「あなたが私に【ママ、もう十分だよ】とサインを送るまで、あなたを助けるために全てを尽くします」と。
集中治療が始まりました。点滴が始まり、薬がぶら下げられ、 鎮静剤が与えられました。また神経科の病院では、どのくらい病気が進行しているか3日かけて診断テストを受けたりもしました。果たしてブローディーの障害はどれだけ進行するのか…どうも首の上部か脳幹のあたりが病変しているようでしたが、経過については誰も予測がつきませんでした。しかしたとえ彼が回復し、再び歩けるようになったとしても、それは少なくとも何ヶ月か先の事だと言われました。以前から犬の歩行補助具をリサーチしていた事も手伝い、果たしてそういったものがブローディーに適切か獣医に尋ねたところ、ブローディーの場合は障害があまりにも重度なのでまだ早すぎるのではないか、といった答えでした。
■カートと出会って■
ブローディーは私の天使。だからこそ彼が再び歩けるように私が出来る限りのことをしなければいけない。 たとえ周りに反対されても、頭がおかしいと思われても、安楽死を勧められても、私が諦めたらそこでおしまいなのだから。そんな思いから私はカート購入に踏み切りました。暖かいスタッフとの話し合いの結果、ブローディーには補助輪つきのカウンターバランスカートがベストだという結論に達しました。車椅子が完成する週になると、床にお腹をつけて軍隊のようにはいつくばりながら歩いたりと、少し動きが見えてきました。ますますブローディーを車椅子に乗せて立たせてあげるのが楽しみになりました。
車椅子の受渡し日の4月11日、ブローディーが最初の一歩を踏み出した時、私は涙が止まりませんでした。2日目になるとすっかり慣れ、ジョギングするほどの早さで動き回れるようになりました。正直ここまですぐに適応してくれると思わなかったのですが、ブローディーは車椅子からなかなか降りたがりませんでした。再び健常犬のようにお外へ行き、お散歩できるようになったのです。
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へへ、お散歩♪
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