女は語る。
「リリィ、こうなったらやってやろうやん!」
握る手にも力が入る。思わずおやつを握り締める。
そう、せっかくアジリティーの神様が舞い降りたのだ。
ジャンピングチャンスを物にしたいま、優勝を狙わずにどうする。
このチャンスを生かさなければ女がすたるというものだ。
意気込む女。そんな女を静かに見守る夫。
女の手に握り締められているおやつを見つめる犬。
それぞれの思いをのせ、決勝が始まった。
【決勝1本目】
15秒間の間にどれだけの障害物をクリアできるか。
ただし、跳ぶ順番は決められており、逆走・順番間違いをした時点で終了となる。
「ジャンプ!!」
「タイヤ!」
女の指示が会場に響く。
いつもは女の指示など聞く耳持たないはずなのに、女の意気込みが伝わったのか
素直に指示に従うリリィ。
終わってみれば・・・・この種目も1位を獲得した。
先程まで苦悩に満ちた顔だった女だが、今は笑顔に変わっていた。
目には涙がうっすらと浮かべている。
しかし、その涙は予選で見せた情けない涙ではなく、嬉し涙だったに違いない。
アジリティーの神様が舞い降りたいま、怖いものなんて何もない。
【決勝2本目】
スラロームを含めた全ての障害を使った中級コース
いやいや、神様も試練というものは与えるものなのだ。
試練を乗り越えてこそ、成功をつかむことができるのだ。
【決勝3本目】
スラロームを含めた全ての障害を使った上級コース
試練というものは乗り越えるものではないらしい。
乗り越えていく過程こそが、大切なのか?。
確かに、失敗は成功のもとと言うが・・・。
いろいろゴタクを並べる女。
とどのつまり「アジリティーの神様は一瞬にしてどこかに行ってしまわれた」のである。
そう、それは「逃走」という結果から判断できるのである。
そもそも、ギャンブラーアジリティーだけで予選通過したリリィ。
それだけでも奇跡というのに、何を期待していたのか。
あれだけトンビは鷹を生まなかったということを実感していたはずである。
それでも人間というものは頭の片隅に「もしかして」という期待を持つ。
その期待を大きく裏切る結果になったとき人間は声も出せないほど落胆するのだ。
「・・・・・・・・。」
肩を落とす女。
その肩をそっと抱く・・・・・・・・・・はずの女の夫は言った。
「おもしろいなぁ〜おまえら。」
女の目がキラリと光った。
そう!そうなのである。
結果はどうであれ、楽しかったことには変わりない。
面白かったことには間違いなのである。
トンネルを出て、目の前のハードルを跳び
タイヤも難なくこなす。
さらに大好きなハードルを跳ぶ。
途中、逃走を謀り、女に「逃げないで〜」懇願されても
やはりハードルの後の
逃亡の面白さには勝てることが出来ない。
例え、女にトイレの始末をさせたとしても・・・
アジリティーは楽しいのである。
しかし、リリィに舞い降りたのはアジリティーの神様だけではなかった。
予選5本中4本記録なし。予選最終種目1位で、決勝進出。
決勝3本中2本記録なし。決勝1本目 1位で・・・・・・・・・・・
総合順位 4位。
そう、まさにギャンブラーの神様も舞い降りたのである。
コードネーム 『リリィ・インパチ(一か八か)』
ギャンブラーリリィ、 誕生の瞬間であった。。。。
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写真は無いものと諦めていたら、参加者の方が撮影してくれていました。
リリィの勇姿?笑姿?をご覧になってください。
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