「よしっ」って言ってもらえないと、ご飯を食べられないの。
ねぇ、まぁ〜だ〜?
コツコツコツコツ…。
「あっ、ママが帰ってきた!」
どんなにいい夢を見ていても、ママの足音が聞こえてくると目が覚めちゃうんだよね。
だって、すっごく嬉しいんだもん。
どうしてそんなに嬉しいのかって?
ママが大好きだからに決まってるじゃん。
……。
はい、正直に告白します。
本当は、待ちに待ったご飯の時間だからです。
その日、ママが帰ってきたのは、夜空になってから。
お腹がペコペコだったボクは、ご飯の準備をしているママの足にまとわりついては
「キャンキャン、まぁ〜だ〜」
「危ないから。おすわりしてもうちょっと待ってて」
「キャンキャン、はやくぅ〜」
「静かに! でしょう?」
「キャンキャン、もう待ち切れないよ!」
「静かにしなきゃ、あげません」
「クゥ〜ン。そんなぁ〜」
そんなやり取りを繰り返し、ようやくボクの目の前にご飯の入ったボウルが置かれた。
普段ならこの後、ちゃんとママの目を見て、ほどなく「よし!」のお墨付きをもらうんだけど、
その日は死にそうなくらいペコペコだったから、ちょっとお腹に力が入り過ぎてしまって。
グルグルグル…。
空きっ腹とはあきらかに違うお腹の音。
「ヤ、ヤ、ヤバイ! こんな大事な時に!」
そう、不覚にもご飯を前にもよおしてしまったのです。
「まずはトイレに行くべきか! いやいや、ご飯を食べてからでも遅くはない!」
お腹のSOSを無視することに決めたボクは「よし!」の号令とともにボウルに頭を突っ込んだ。
「フガフガフガ。お・い・し・い〜」
これぞ至福のとき。そして、ふっと気が緩んだ瞬間だった。
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お尻から、あつ〜い物体が…。
「や〜だぁ、何やってるの!」
そうです。
ボクは不覚にも、ご飯を食べながら粗相をしてしまったのです。
このとんでもない事態にワナワナきているママを横目にみながら
「こうなったら、何が何でも完食してやる!」
ボクは、気づかないふりして食べ続けた。
その後、どうなったかって?
ちゃんと、完食しましたよ。
その後、ママにしこたま怒られたけどね。