私と犬が出会ったのは、まだ寒さのある2月だった。
家では金を出して犬を買うのには抵抗があった。
そういう出会いもあるとは思っていたが、家族になるべき存在を買うのはやめる、というのが暗黙の了解になっていた。
やがて、出会った。
一緒にいた兄弟犬たちはみな死んだそうだ。
ただ1匹の生き残り。
ミニチュアダックスの奇形児。どんな生まれなのか分からない、たらい回しにされた子犬だった。
無理なブリーディングの結果なのか?
尋ねても犬は、ただおどおどと物陰に隠れるだけ。
私はその日、友人宅にいた。
だから来たときのことは分からない。妹がトイレをしつけたそうだ。すぐに覚えた。
どこかの家で、あらかじめ教えてあったのだと思う。
次の日、帰ってみると子犬がいた。
小さかった。よろよろしていた。足の関節がいびつに曲がっていた。
物音がすると、すぐに陰に隠れて、震えていた。
抱いてみれば、おとなしくしていた。
私はこの犬を愛そう、と決めた。