洋犬コロが語りはじめる小説です。家族を見守るコロの思いがあふれ出すストーリー。

November, 2010
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[ 連続小説 ] 第4回

 

不気味なご近所さん

 

1126147461376645.jpg ボクがここんちに来て4年くらい過ぎた頃だったと思うんですけど、とんでもない事件が起きちゃったんです。人間の恐さを感じました、この時ばかりは。
 マンションの3階がボクたちの家だっていうこと、前に話しましたよね。まず、これが問題だったんだ。4階建てのマンションが3つの棟からできている100世帯くらいの規模のマンションなんです。
 これを買うとき、この事件が起きる5年くらい前らしいのですが、ケンサンとお母さんの間で結構激しい意見の違いがあったんですって。
 ケンサンの持論は、マンションに住むなら1階という考えなんだそうです。なぜなら、何が起きても加害者にはならないで済むからというのが根拠なんです。
 1階の住民であれば、被害者になることはあっても、加害者にはなりにくいと考えているんです。被害者ならば、自分が我慢すればことは大きくならないで済むと言うのです。ケンサンらしいとボクは思いました。
 お母さんの気持ちもわからないではないんです。ここに引っ越してくる前に住んでいたマンションは1階だったそうです。
 2階の音がうるさいこと、地面からの湿気が多いこと、日当たりが上の階に比べて悪いこと、その上景色が見下ろせないこと。ここを購入するとき、意見は真向から対立したんだそうですが、結局、「家にいる時間が一番長いのは私」の一言で、ケンサンが折れたみたい。
 集合住宅には、色んな人が暮らします。だから自分の家族の基準が通用するとは限りません。ケンサンはお兄ちゃんやまだ小さかった弟のタクちゃんに「静に」といつも言ってなくちゃならない生活は良くないんじゃないかって、お母さんをずいぶん説得したらしいんですけど、ダメだったみたいです。ボクを買うときも、この家を買うときも、ケンサンは結局、お母さんの要求に負けちゃっているんです。
 不幸なことに、ケンサンの心配は見事なまでに的中してしまったのです。2階に住んでいるのは、ケンサン夫婦より一つ二つ上くらいの夫婦に、タクちゃんより3つ年下の女の子の3人暮らし。
 ボクの家で少し音がうるさいと、下から何かで突き上げるんです。ドカーン、ドカーン。これって、想像するだけで結構恐くありません?
 ちょっとヘンだから気をつけようなんていうのですけど、毎日の生活ですから、また、忘れちゃうんです。すると、ドカーン、ドカーン、無気味な家族です。
 事件が起きたのは、お母さんがタクちゃんのサッカーの試合を見に行った夏休み中のある日のことでした。

 

つづく。

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