お母さんの覚悟
「家のことだってちゃんとやっているんだから、いいじゃない」
「ちゃんとやってるようには見えないね」
「やってますよ、子供たちの食事だって作ってるし、家の掃除洗濯、コロの散歩、ちゃんとやってますよ。帰ってくるのが遅いからわかんないんじゃないの」
「出来合いのものだったり、店屋物をとったりする回数が増えたって、子供たちから文句が出てるじゃないか」
「毎日じゃありません」
「毎日だったら、問題だ」
ケンサンは続けて言います。
「仕事仕事って言うけど、いったいどのくらいの利益が上がってるんだ。これだけ家族の時間を割いて、車を使って、ひとつきにどのくらいの利益を得ているのか説明してくれないか。この在庫の山を見る限りでは、とても利益が上がっているとは思えない」
「売上はちゃんと上がっていますよ」
「利益だよ、純粋な利益」
「……」
「5年間も勤労奉仕どころか、持ち出ししているとは思わないの。コンビニのレジのパートだって、ちょこっとやって月に5万円くらいは稼ぐでしょ。5年間だったら300万円の利益になるんだよ。今の仕事、5年間でいったいいくらの利益を上げたのか教えてよ。せめてこれだけ稼いできたと言うことがわかれば、子供たちにだって説明がつくというもんだ」
「……」
ボク、グーの音もでないお母さんが少し可哀想に思えちゃいましたけど、やめると絶対言わないお母さんのしぶとさも同時に感じちゃいました。
つづく。
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