寒い朝。
仕事へと向かう道の片隅で、四肢を伸ばした猫が倒れている。
頭の周りには、まだ赤さの残る血だまり。
友達との待ち合わせに向かう道。
道の片隅に、仰向けに転がる名も知らぬ鳥。
羽枕を破ったみたいに、飛び散る羽毛。そして点々とする血。
嘴の中に溜まった血を、吐き出すと同時に顎を上げ、動かなくなった。
最期に、その茶色の眼には空が見えただろうか。
周りを飛び回る鳥は、友か恋人か。
カラスの声。
群がる虫。
側溝に横たわる白黒の身体。
彼がかつて歩き回る姿を、私は見たことがある。
命とは何か。
ある線で、突然隔てられる、生と死の狭間。
魂が離れた肉体は、あまりにも虚しく映った。
いつか君のこんな姿を見る時が来るのだろう。
君たちの種の命は、あまりにも短いから。
きっと私は耐えられないだろう。
君はまだ若いから、何を言っているんだろうと笑うかもしれない。
君の成長が嬉しい。
君と歩く時間は楽しい。
だからその分
君が老いて行くのが怖い。
君との道程の残りを思ってしまう。
神様がいるなら、たった一つ。
君より、一日だけ長く時間を下さい。
君のために仕事をする時間を、一日だけ下さい。
あとの時間は、君の健康と幸せと引き換えにして下さい。
要らないのです。
考えたくない、考えられないのです。
こんな風に考える私を、君は悲しく思うのかな。
でも、こんな気持ちをくれた君に出逢えたことが何よりの宝物。
君がなによりも、私の宝物。