私がトリミングの修行をする所には、色んな種類のわんちゃん達が来てくれます。
トリミング犬種やそうでない犬種、近頃は嬉しいことにMIXの子も多く来てくれます。
その中で東京では珍しいプーリーと言う牧羊犬もトリミングに来ます。プーリーと言う犬種はハンガリーが原産国の筋肉質な中型の犬で毛量がたいへん多く縄状になっています。
純血種はもともと仕事を持ちその仕事を合理的にこなせるよう、ブリーディングが行われ現在の姿かたち、性質や気質に固定されたスタンダードと言うものが存在するのですが、プーリーも同じく群れから離れた羊の背中に飛び乗り方向転換をさせ群れに戻すなどの仕事をするために改良された犬種でした。
そんなプーリーですがわたしのもとには2週間に一度送迎の車でトリミングにきます。
このプーリーはとても寂しがり屋で少しでも側を離れようとすると噛み付いてきます。私も一度ふくらはぎを咬まれると言う怪我をしました。送迎のお兄さんに聞いたところ、このプーリーのオーナーさんは飼ったはいいがケージに入れっぱなしでストレスが溜まっているとのことでした。
それだけならそう言う犬は世の中にたくさんいるので納得がいくのですがそれならどうしてプーリーを飼ったのか?と私は疑問に思いました。
プーリーのトリミングは縄状の毛を一束ずつ手で引き裂きハードジェルを付けてよっていきます。しかしこのプーリーは毛束がフェルト状にかたまり、その作業も困難なほど手がつけられないかたまりができているのです。同じく耳の毛もフェルト状に固まっています、片方の耳はその毛のせいで壊死を起こし半分ちぎれてなくなっていました。
ペットとして飼われ、こんなことになるなら、本当にこの犬を愛しているなら、独特の容姿を諦めいっそバリカンで体の毛を全て刈ってあげたほうがオーナーさんにとってもプーリーにとっても快適に過ごせるのではと私は思いました。しかしオーナーさんの希望はスタンダードに近いトリミング・・私達はその希望どおりに仕上げます、何時間も吠え毛束を引っ張られながら、また2週間もしたら異様な臭いを発してここに来るプーリー・・他のお仕事ももちろんそうなのですが楽しい・可愛いだけじゃトリマーにはなれませんね、
一日も早くオーナーさんと意志の疎通のできるトリマーになれたらと思います。