始まりは日曜の夜。
優柔不断な旦那に夕食のメニューの希望を聞き、
天ぷらと親子丼を作ることに決めた私。
ご飯を炊き始め、親子丼をほとんど作り終え
ここまでは夕食の準備は順調かに見えた。

私は揚げ物の準備を始めた。
その時はこの後待ち受ける悲劇も知らずに…。

揚げ物器の中のラードはスイッチを入れたことによって
溶かし始められていた。
私はたまねぎを切り、人参を切り、出来上がりを想像しながら
手を動かしていた。
ふと揚げ物器の中を見るとラードが少ない。
どうしたものかと考えていると旦那が一言言った。

「冷蔵庫の中にあと一つラードがあるよ」

私はそのラードを加えることに決めた。
何も考えずにラードを用意する私。
今思えばこの後になんとも愚かなことを起こすと言うのに。
揚げ物器のふたを開け、ラードを加える用意をする。

と、そのとき、ラードがするっと容器から落ちた。

あ、

ばしゃ〜ん

うおぁぁぁぁぁぁぁぁ

私は何とも言えない叫び声をあげた。
熱かったのではない。
びっくりしたのだ。

私の叫び声にびっくりする旦那。

WHAT???WHAT???

事情を察知した旦那は私をお風呂場へと連れて行った。
シャワーから勢いよく流れる水。
冬とあってその水は氷水のように冷たかった。
１５分から２０分腕に水を浴び、その間旦那は
途中で止まっていた天ぷらをあげていた（笑）
天ぷらが揚げ上がりとりあえずと夕食を食べ始めた私たち。
しかし私の腕の痛みはひどくなるばかり…。

旦那が言った。

「食事が終わったら病院へ行こう」

私はきっと今夜中には帰れると思い、それに同意した。
そのまま入院になるとは思いもしなかった。

病院へ着き、受付で名前などを述べていると痛みがまた戻ってくる。
私はそのまま救急治療室へ促された。
そしてまた腕を水につけるよう言われる。
２０分ぐらい水をつけていただろうか、一人の医師が入ってきた。

ぐあっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

なんっつうかっちょいい医師であろうか！！！
例えるならばエリック・バナのような。いや、エリック・バナよりかっちょよい！！！

ついつい「どうしました？」の質問に
「あなたに会うために腕を焼けどしてきました」
と答えたくなる。
旦那は隣にいる。
イケメン医師は私の腕を診察し、カルテに私の腕の状態の
絵を描き（私が描いたほうが上手かったような気がするが）

「じゃ、看護婦が破傷風の注射して、クリームを腕に塗って
サランラップを巻くから」

と言って去っていった。
「なんだ、あんたがするんじゃないのか…」
なんてちょっとがっかりしながら看護婦を待っていたら
彼がまた来た。

「そういう風に腕を火傷してると動脈を押しちゃうことがあるから今日は一晩泊まっていってね」

そう彼は言ってまた去っていった。

入院かよ…。
こんなに大事になるとは思いもしなかったのだが
人生ではじめての入院に不謹慎にもちょっと楽しんでいた。
看護婦が破傷風の注射、クリーム、ラップを持ってきた。
まじでラップだった。スーパーで売ってるサランラップだった。

破傷風の注射は痛かった。
クリームを塗られ、ラップで巻かれ、痛み止めをもらった。
そして看護婦が去った直後、激痛が私の腕を襲う。
まるで焼けるかのような痛みが腕を走り
うずくまる私。動揺する旦那。

「看護婦呼ぼうか？」

と旦那が聞いてきたが

「痛み止めを飲んだから大丈夫だと思う」

と我慢する。
私はこう遠い国にいても日本人だななんて思った。
即効性の痛み止めだったのだろうか、
痛みはだんだん治まってきた。
と、同時に車椅子をもった人が私を迎えに来た。

「歩いて行けるのに…」

なんて思いつつまあ人生初の入院だしと
車椅子も体験することに決めた。
エレベーターで５階へ昇り部屋へ案内される。
個室だった。嬉しかった。
旦那に洗面用具を持ってきてもらった。
疲れている旦那を家に帰し、私も寝ることにした。
痛み止めが効いているのであろうか、
まぶたがとても重たかった。

入院一日目の夜はそう過ごした。

＊と、言うことで入院日記です。
しかも何故か小説語り口調。あはは。
もちろん退院まで続きますよ。
ちなみに手首も火傷してるので動かしにくく
ディクスターと遊ぶこともできません。
まったく、めんどくさいな。