犬の病気、猫の病気などを詳しく解説しています。

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痴呆

犬の痴呆

 

ペットフードの発展やワクチン接種率の向上、医療の発展、etc・・により高齢化のコンパニオンアニマルが増えてきています。
 それとともに痴呆性疾患の発生が多く見られるようになってきています。
 13才以上の室内犬に発生率が高いことが知られ、症状としては無目的な行動や反応性低下、単調な鳴き声、習慣・行動の変化、飼い主の識別不能、学習した行動を忘れる、などなどです。

 動物のQOLが低下するほか、トイレの失敗など飼い主さんの生活に影響を及ぼすこともあります。
 MEリサーチセンターの内野富弥 獣医学博士が痴呆犬の判定基準シートを発表されていますので、まずは症状と照らし合わせて採点してみましょう。

痴呆予備犬 痴呆犬

31〜49点 50点以上

 

1.食欲/下痢                                                              

正常 1
異常に食べるが下痢もする 2
異常に食べて、下痢をしたりしなかったりする 5
異常に食べるが、ほとんど下痢をしない 7
異常に何を食べても下痢をしない 9









2.生活リズム

正常(昼は起きていて夜は眠る) 1
昼の動きが少なくなり、夜も昼も眠る 2
夜も昼も眠っていることが多くなった 3
昼も食事時間以外は死んだように眠っていて、夜中から明け 方に突然動き回る。飼い主による制止がある程度可能 4
上記の状態を人が制止することが不可能な状態 5










 


3.後退行動(方向転換)

正常 1
狭いところに入りたがり、進めなくなるとなんとか後退する 3
狭いところに入るとまったく後退できない 6
(3)の状態ではあるが、部屋の直角コーナーでは転換できる 10
(4)の状態で、部屋の直角コーナーでも転換できない 15












4.歩行状態

正常 1
一定方向にふらふら歩き、不正運動になる 3
一定方向にのみ、ふらふら(大円運動)歩きになる 5
旋回運動(小円運動)をする 7
自分中心の旋回運動になる 9










5.排泄状態

正常 1
排泄場所をときどき間違える 2
所構わず排泄する 3
失禁する 4
寝ていても排泄してしまう(垂れ流し状態) 5









6.感覚器異常

正   常 1
視力が低下し、耳も遠くなっている 2
視力、聴力が明らかに低下し、何にでも鼻をもっていく 3
聴力がほとんど消失し、臭いを異常に、かつ頻繁に嗅ぐ 4
臭覚のみが異常に過敏になっている 6










 

7.姿勢

正常 1
尾と頭部が下がっているが、ほぼ正常な起立姿勢をとることができる 2
尾と頭部が下がっているが、起立姿勢をとれるがアンバランスでふらふらする 3
持続的にぼーっと起立していることがある 5
異常な姿勢で寝ていることがある 7











8.鳴き声

正常 1
鳴き声が単調になる 3
鳴き声が単調で、大きな声を出す 7
真夜中から明け方の定まった時間に突然鳴き出すがある程度制止可能 8
(4)と同様であたかも何かがいるように鳴きだし全く制止できない 17











9.感情表出

正常 1
他人及び動物に対して、何となく反応が鈍い 3
他人及び動物に対して、反応しない 5
(3)の状態で飼い主のみにかろうじて反応を示す 10
(3)の状態で飼い主のみにも、まったく反応しない 15









10.習慣行動

正常 1
学習した行動あるいは習慣行動が一過性に消失する 3
学習した行動あるいは習慣行動が部分的に持続消失している 6
学習した行動あるいは習慣行動が部分的に殆ど消失している 10
学習した行動あるいは習慣行動が部分的に全て消失している 12

 













 (MEリサーチセンター 内野富弥 獣医学博士 発表)

 

 

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臨床獣医学フォーラム・レポート

if--もしも愛犬が痴呆になったら

高齢化する犬たちの今後を考えるとき
避けて通れないのが「痴呆犬のケア」をどうするか




あなたの愛犬が、もし痴呆になったら?
ふだんはなかなか考えてもみないテーマですよね。かくいうわたしも、うちのアッシュやハービーが老犬になってぼけて、わたしの顔すらわからなくなったときのことなど想像もできませんでした。だけど、犬の寿命は1年が人間の4年ぶん。9歳のアッシュはすでに50代をとうに越えている勘定になります。
けして避けては通れない話なんです。そこで今回は、日本臨床獣医学フォーラムの年次大会で動物エムイーリサーチセンターの内野富弥先生が講義をされた「老齢動物の看護---特に痴呆犬の日常管理について」の中から、そのハイライトをご紹介することにしましょう。

内野先生によれば、痴呆になるもっとも多い犬種は柴犬。つぎが日本犬の雑種とのことで、洋犬は比較的少ないようでした(だけど残念ながらまったくないわけではありません)。老齢犬の治療とケアを専門的に行ってこられた先生の話では、犬の高齢化とともに痴呆は徐々に増えてきており、その数は90年代の終わりから飛躍的に伸びてきているそうです。そしてまた、高齢犬の飼い主には高齢者の方が多く、そのケアにかかる負担はハンパではありません。だからこそ、少し早すぎるかなというぐらい早めの心構えや対応が必要というわけです。


痴呆の犬の「特徴」はつぎのとおり。
1 単調な声で吠える
抑揚のない鳴き方は人間にはかなり耳障り周辺から苦情が出る
2 前にのみトボトボと歩く
バックできる犬はまだまだ大丈夫、バックは高度な行動
3 狭い場所に入りたがる
壁の隙間や廊下の隅、机の下などにもぐりこみ出られなくなる
4 同じ場所で旋回する
グルグルまわる、ただし左回りは脳腫瘍の疑いが濃い
5 異常な姿勢で寝る
ひっくり返ってアタマを下にして寝たりする、かなり無理な姿勢
6 自分の名前も飼い主の顔もわからない
呼ばれても無反応、飼い主が来ても喜ばない
7 よく寝て、よく食べる
ただし食べてもやせてくる、下痢もしない(自律神経が異常)
8 夜中に起き出して吠える
飼い主が何をしても制止できない
9 直角のコーナーで方向転換ができない
首をちょっと曲げるだけの動作ができなくなる


これらのほか、犬に特有なゆたかな感情表現もまったく見られなくなるそうです。そして「習得してきたことの消失」、つまりそれまでに教えてきたしつけやコマンドはすべてきれいに忘れ去ってしまうわけです。しかしながら、その半面、人間の場合にはけっこう深刻な垂れ流しはほとんどないとか。
内野先生によれば、野生に近い動物である犬には、外敵から身を守るためニオイを残さないのと、自分の寝床は汚したくないという本能だけは残るということでした。あと、目や耳がきかなくなっても、嗅覚だけは最後まで生きているケースが多いそうです。

それでは、こうした痴呆の症状が出てきたらどうするか?
それについてはつぎのようなポイントがあげられていました。


1 多臓器疾患をチェック
肝・腎・甲状腺の病気、関節炎、ガンを併発していることがある
2 栄養失調をふせぐ
食べているようで飲み込んでいないケースがある
3 散歩に出してあげる
散歩ができればより長生きできる、草の中などを歩くと刺激になる
4 日光浴させる
生体時計を活性化する、ただし夏の日中の散歩は逆効果、寒さにも注意
5 室温を調整する
冬は人が暑いと感じるぐらいの温度(26〜27c)に設定
6 スキンシップを大切に
頭から顔、首、背中とさわる手順を同じに
7 同じ人が管理する
いつも同じ飼い主が管理する、別の人がやるときは同じ手順で
8 犬との接触もこれまでどおりに
ぼけた犬に攻撃性はない、攻撃性があれば痴呆ではない
9 入院させない
場所替えしない、悪化するだけ、自宅でケアするのが一番
10 特製のケージをつくってあげる
コーナーのないケージで介護を(イラスト参照)
11 嫌がることをしない
無理に押さえつけたりすると暴れて事故のもとになる
12 床ずれは早めに処置する
寝たきりになると床ずれができる、ひどくなると死に至ることも


痴呆を治すクスリはありません。コントロールするだけだそうです。しかし近年、多くの研究により、EPA、DHAなどの不飽和脂肪酸が人間のアルツハイマーには有効なことがわかってきました。
それは犬でも同じだそうです。しかし内野先生いわく、ドッグフードにはEPAやDHAが入ってないものが多い(ドッグフードの主原料はなんといってもお肉ですから)。かつては柴犬をはじめ日本の犬たちは、人間の余り物を食べて生きていましたが、その中にはけっこう煮干しなど魚類が入っていた。日本の犬たちは知らず知らずのうちにEPA、DHAをちゃんと摂取していたというわけです。
ところが人間の残飯からドッグフードに切り替わったあたりから、お肉中心の生活になり、それに合わせて痴呆も少しずつ始まった。だからもう一度、EPAやDHAを積極的に与えることが、痴呆の進行を止めボケ防止にもなるということです。

内野先生は、「メイベット」(明治製菓)という不飽和脂肪酸のサプリメントを使って、夜鳴きがなくなる、顔に表情が戻ったなどの成果を得たと報告されていました。本当ならぜひ試してみたいものです。

やがてきっとくるその日のために、わたしたち飼い主ができること。それは、何があってもあわてず動じず、事実を事実として受け止めてしっかり対応すること。そのためには、こうした予備知識をふだんから仕入れて、転ばぬ先の杖を持っておくことだと思いました。それが、たくさんの深い愛情をくれた愛犬への恩返しなんですものね。

 

 

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