分離不安症とは
飼い主への過剰な愛着が強い犬の場合、飼い主がいなくなったときに不安を感じ、鳴いたり吠えたり、そそうをしたり、破壊行動を取ったりする症候群のことです。
分離不安症は身近な問題です
・専門家によると、分離不安症で苦しむイヌは全頭数の7%〜15%にのぼると推定されています。
・性別、年齢、犬種にはあまり関係無く症状がでます。性格による場合が多いようです。
・ 飼い主のほとんどは、これを犬のいやがらせや、性格の悪さととらえています。
・分離不安症が治療できる病気であることを知りません。
分離不安症は病気です。ですから治せます。
この行動は独りぼっちにされた嫌がらせで、飼い主を困らせようとして起こすのではありません。病気なのです。この病気の名前の通り「不安」になってどうしようもなくなると言う病気なのです。分離不安症というのは病気で、犬はそれにより大変苦しんでいる ということを解ってあげてください。
・ 医学的には脳の神経系の病気になっています。犬の性格もあります。甘えん坊の犬は罹りやすいといえます。飼い主の努力で3ヵ月ないし6ヵ月で治せます。
原因は?
・ 飼い主と離れると脳内の神経伝達物質セロトニンの脳内作用が減弱し、それによって不安、恐怖が増大します。 ・毎日一緒に居るために、一人で置かれる事に慣れていない。 ・飼い主の突然の態度の変化やライフスタイルの変化に対応できない。 ・外出時や帰宅時における飼い主の異常な愛情表現の過多による。 ・飼主との強すぎるきずな。間違った飼育、間違った犬との付き合い。
【チェック】
● あなたは世界でうちの子が一番かわいいと思っていますか。 ● 食事の時には一緒にあなたのお皿から食べたりしませんか。 ● 少しくらい悪くても叱るのはかわいそうだと思いますか。 ● 犬に長時間留守番をさせるのはかわいそうだと思いますか。 ● 家にいる時あなたの後ろをいつもついてきますか。 ● トイレやお風呂の時などドアの前で待っていませんか。 ● あなたが居なくなると落ち着きがなくなりますか。 ● ドアなどガシガシしませんか。 ● 少しご近所に行くだけでも抱っこして連れて行きますか。 ● 外出する前は必ず抱きしめてあげますか。「○○チャンごめんね」「良い子で居てね」なんていいながら、出かける随分前から甘やかしていませんか
これらにいくつも当てはまるなら、あなたの愛犬は「分離不安症」ではないかと疑って下さい。いえ間違いなくあなたも「分離不安症」?! |
症状は?
外出前から反応します。
● 飼い主の外出の気配を察知すると、変化が見られる。
● 飼い主が出て行く姿に対する攻撃性 (うなり声、足首、スカート、ズボンに噛みつく)
● 破壊行動 (物をかじる、穴を掘る、物を破る) ドア、カーペットなど
● 自虐行為 (体を過度になめる事で皮膚炎・肉芽腫になる)
● 多動 (止まることなくウロウロする、階段を上り下りする)
● 不適切な場所での排便、排尿
● 心身症 (よだれ、嘔吐、下痢) 消化器症状を伴うこともあります。食欲不振
● 無駄吠え(5〜10分くらい吠え続ける)
飼い主の外出中に次のうち1つまたは複数の症状が認められます。
物を噛んだり引っかいたりする 。破壊行動
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過剰な吠え (無駄吠え)
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診断
まず、問題行動が他の泌尿器疾患や内臓疾患からきていないかを、
身体検査、血液検査、尿検査で調べます。
医学的疾患の可能性がなければ他の問題行動を除外します。
これには専用のカルテがあり、アンケート形式で問診していくと
分離不安症か他の疾患かを区別しやすくなっています。
上記の症状が1つ以上ある。飼主の不在時、もしくは近づくことができないときにおきる。
出発前に不安、苦痛を生じる。帰宅時に過剰な反応をおこす。
破壊するときは飼主が出ていったドアの周囲に集中。
常に飼主の後を追い回す。環境の変化がなかったか等をもとに診断します。
治療
『分離不安症』に関しては効果的な対処法が確立されています。
また,補助的に用いられることができる有効な医薬品も承認されています。
もし,愛犬が『分離不安症』に思い当たる点があるようなら専門家や獣医師に相談しましょう。
行動療法
外出前
- 外出する30分くらい前から犬に話しかけたり、注意を向けたりしない。
- 犬と遊んだり犬に触れたり、食事を与えたり、話し掛けたりしない。犬を見ることさえもしない。全く無視。
- 静かに何も変わった事がないかのように出かけます。トイレか何処かに行ったのかなっと思わせる。
- 飼い主の臭いのついたものをゲージの中において出かける。
- 犬の気を散らすためにお気に入りのおもちゃなどを与えます。外出と良いことを関連づけるために、ご褒美など、何か特別なものを与えておきます。
- 重要なことは、犬がひとり取り残されても楽しい気分でいられるようにしてあげることです。
【ヒント】 中にドッグフード等が入れられるタイプのオモチャがあります。これは効果があるようです。一度試してみて下さい。
帰った時
- 犬が泣きじゃくって、飛びかかろうとしますが、落ち着くまで無視 (上記の外出時の注意と同様)
- アイコンタクトは大切ですから、じっと見てあげると安心しておとなしくなります。
- 帰宅すると犬が大喜びで尻尾ふりふりじゃれてくるのをすぐに「いい子にしてたねー」なんて撫でてあげてはいけないのです。飼主の帰宅で興奮がおさまるのを待ってから相手をしてやるんですね。
- 遊ぶときも犬がねだったから遊ぶのではなく、飼主の意志で遊びはじめ、終わりを決める。落ち着いたときにだけ一緒に遊んであげるようにすると、いつも落ち着いた子になります。
- 留守中にソファーの上などで排尿等をしていても叱らないで下さい。 出来ればゲージなどに入れることに慣れさせたほうが治療にもなりますし、犬にも飼い主にも益があるでしょう。
【ヒント】 鼻をおしっこした場所におしつけてひっぱたくと昔はよく言ったもんですが、犬の記憶力は限られた時間しかありませんから、何で叱られているか理解できないでしょう。「訳が分からないまま、僕。虐待されてるうー」というのが犬の感想らしく、帰宅時にそそうを叱っても何も良い事はありません。苦痛を与えるだけで犬の不安を募らせます。
普段の接し方
- 接するときは飼主の主導で。
- 犬の独立心を育てる
- 外出しないときでも外出のふりを装う。
- コミュニケーションをよくとる
犬が「カリカリ、すりすり 撫でてよう」とあまえてきても撫でてあげてはいけません。(実は「カリカリ おいジジイ、俺様を撫でろ!」と思ってるらしいが)撫でるときはあくまで飼主の主導で決定。撫でる前に、お手、お座り、待て等をさせる。飼い主が主導権を握っていることを犬が分かっていると確信した時には遊んであげます。(それは犬がとても落ち着いていると思えるときです。興奮気味の時は要注意です。そのままそっとしておきます)
独立心を持たせるのは大切で、いつも犬に触ったり声を掛けたりして構っていると、俗に言う「甘えん坊」になってしまいます。犬を呼んで横にならせます。「ごろん」しなさい。と言って犬が「ごろん」をすると触ってあげましょう。その姿勢では飼い主に飛び掛る事は出来ません。服従の姿勢です。
犬をなるべく一人にする時間を多くしていきます。あなたが犬のそばから離れる時(トイレに行く時、お風呂に入る時など)犬がその状況に慣れて落ち着けるように訓練が必要です。自宅に居る時もゲージの中に入れて別の部屋において置きます。一人にして置かれる時間がだんだん延びてくるともう大丈夫。自立できるようになり、一人でも長時間遊んでいられます。
外出前に服を着替えるとソワソワし出す。カギのガチャガチャ音で鳴き出す仔がいます。これを活用して、外出しなくても同じような事を繰り返して慣れさせることが出来ます。普段からカギ音をチャラチャラさせる。一回ドアの外に出てすぐに戻る。これを繰り返す。近所の人に見られたらあそこの御主人どうかしちゃったと思われるかもしれない。
コミニュケーションとは オテ マテ スワレ ヨーシヨシ。グッドボーイ これでいいんですね。飼主に服従して誉めてもらえる。なんだ、そんなことと思っているようで、実はできていない人が多いんです。
これを最低3ヶ月継続すると改善していくようです。行動療法の重要な点は、家族全員で実施しなくては効果が無い点です。一人の裏切り者で全てが無に。残業で遅く帰宅したお父さんが 「おーよしよし、俺はこんな夜遅くまで家族のために働いてぼろぼろなのに、みんな寝ちゃって迎えてくれるのはおまえだけだよ ナデナデ」とやっていたりすると失敗。行動療法の指導には、家族全員で病院に来てもらってカウンセリングしろ といわれるのはこのためです。行動療法って実は人間の治療がメインなんです。
薬物療法
行動療法に合わせて、セロトニンの脳内濃度を高めて不安をやわらげる薬を使用するとより効果的です。行動療法1ヶ月で改善率が40−50%なのに対して、塩酸クロミプラミンを内服した場合改善率が80%まであがるというデータがあります。通常、行動療法3ヶ月に薬物療法3ヶ月。 薬のみで行動療法をしない場合は効果はなし。あくまでも行動療法の補助として用いられるもので単独で使用しても効果は望めないようです。
ノバルティス アグロ株式会社
クロミカルムR錠はどのように作用するのですか?
クロミカルムR錠は、犬の分離不安症の治療の補助薬として認可されている唯一の動物用医薬品です。クロミカルムR錠は精神安定剤や鎮静剤とは異なり、犬の個性や記憶に影響を与えません。
安全性 :: クロミカルムR錠は、臨床試験でその安全性が証明されています。臨床試験で観察された一般的な副作用は、嘔吐、嗜眠、下痢でした。
有効性 : クロミカルムR錠を用いた治療プログラムでは、クロミカルムR錠が犬の不安を和らげ、行動療法を受けやすくするように働きます。
使用方法 : クロミカルムR錠は、行動療法と併用して使用します。クロミカルムR錠は、食事に混ぜて与える必要がありません。以下に、行動療法の一環である、犬との接し方に関するガイドラインの一部を示します。
以上の記事は以下の皆さんのご好意により編集いたしました
■金町アニマルクリニック http://www.k-a-c.net/
院長 増田寿子
〒125-0042 東京都葛飾区金町2-29-6 KACビル
TEL:03-3609-7517 FAX:03-3609-3515
■にほんまつ動物病院 http://nihon.matsu.net/
院長:二本松昭宏 福知山市菱屋町
■「ぺっぱら」編集室」
http://pepara/com
【論考・まとめてみました】
「分離不安症」は厄介な性格の問題ではありません。治療が可能な病気なのです。
飼い主への依存心が強い仔に起こりやすいと思われます。もともと犬は社会性の強い動物であり、群れに属していたいという本能を持っています。しかし飼い主はいつも一緒に居られる訳ではありません。飼い主が犬から離れる状況は毎日生じます。トイレに行くとかお風呂に入る、ご近所に行くなどです。ひとりでも落ち着いていられるように訓練するのは飼い主の責任ですし、それこそが愛犬への愛情なのです。
飼い主が出かける準備を始めたり犬がそう感じるとそわそわし始めます。そしてついに飼い主が家を出ると狂ったように鳴いたり家の中を荒らし回ります。破壊行動が見られるのは外出後15分以内が最も多いのです。これは一人ぼっちにして行った飼い主への嫌がらせではありません。寂しさや不安から居ても立ても居られない、精神状態の不安定さがそうさせているのです。
破壊されたものに気づいても、そのことで犬を責めてはいけません。事後の時間が経ってしまって犬になぜ怒られたかを理解することは不可能ですし、犬の不安感を高めることになり、問題はより悪化します。
犬の側も飼い主に愛情があるんだけど、飼い主が怖いという葛藤で苦しむことになります。怒ると反省するという事をよく聞きますがそれは間違いであり飼い主の勘違いです。叱ったら反省しているように見えるだけです。犬が耳を伏せたり尾を巻いたりしているのは服従行動であり、なぜか分からないが飼い主が怖そうにしているのでとりあえず服従を示しているだけです。犬は3秒以上経過していることに対して反省したり理解したりはしません。叱るなら事が起こって3秒以内、出来れば速攻で叱らなければ効果が無いと理解して下さい。
飼い主への過度の依存心が原因ですので、外出前後にあまり構い過ぎないようにします。ですから外出30分前から犬に構わない。声を掛けない。決してみない。食事もおやつも与えない。外出前に犬を興奮させて、急に飼い主がいなくなると精神的な落胆が大きくなります。
支度をしだしたらなにかおもちゃを与えてそちらに注意を向けさせ、気が紛れるようにします。コングなどにおやつを詰め込んで外出時に与えておくことも良いでしょう。
帰ってきても過度に反応させないようにして、興奮しているようだったら一旦おすわりやマテなどの命令を聞かせて落ち着かせ、その後優しく接してあげるようにして下さい。
もう一度順位付けの再確認をして、飼い主と犬の間にきっちりと線づけをします。犬が飛びついてきたらかまうというよりも、号令をして従ったら褒めてあげるという方が好ましいでしょう。その後短時間の外出から始めます。最初は5分くらいから始め、大丈夫だったら少しずつのばしていきます。時間があきすぎて耐えられなかったら、耐えられる時間に戻して時間を少しずつ延ばしていって下さい。
重症の場合は薬剤、精神安定剤も併用しながら改善していくことになります。
本人に悪気はなく、むしろ飼い主さんを慕っていることの表れですので根気よく取り組んでいきましょう。
以上の記事は以下の皆さんのご好意により編集いたしました
■金町アニマルクリニック http://www.k-a-c.net/
院長 増田寿子
〒125-0042 東京都葛飾区金町2-29-6 KACビル
TEL:03-3609-7517 FAX:03-3609-3515
■ にほんまつ動物病院 http://nihon.matsu.net/
院長:二本松昭宏 福知山市菱屋町
■ 「ぺっぱら」編集室 独自編集もあります
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