うちにはグリア以外にもぬいぐるみはいるのだが、基本的にはグリアだけが名前を与えられペットとして生活している。そこには簡単には説明できない数奇な運命の輪があるのだと思う。うちの実家にいたクロは特に運命に翻弄されることなくその生涯を全うしたが、妻の実家に住む直次郎はなかなか数奇な運命を辿ってきている。まず生い立ちだが、これは義兄がどこぞやらから拾ってきたということになっている。しかし話を良く聞くと「よくなつくもんだから餌をあげたら、それを食べてそのまま立ち去ろうとしたから、そういうもんじゃないだろと連れてきた」という、
拾ってきたのか連行してきたのか分からない状態である。そんなふうにして妻の家族の一員になり、いずれ僕とも知り合うことになった直次郎だが、僕は本当に直次郎がかつての直次郎と同じなのかどうか不思議に思うことがある。というのも直次郎はかつて
尻尾が切れたことがあるらしい。なんでも家具が倒れただかなんだかして直次郎の尻尾に落ちて、その結果、カギ尻尾だったカギの部分が切れて普通のまっすぐな尻尾になったそうである。尻尾の一部が猫の性格形成にどう影響するかは分からないが、これは人間で言えば小指を失うに等しい感じじゃないのだろうか? そこに何かがあったのではないかと僕は疑うのだが、かつての直次郎を知らない僕にとってはそれは永遠の謎なのである。
ちなみに写真は合成。なぜならたぶん直次郎はグリアに攻撃を仕掛けるのではないかと予想されるからである。かなり人懐っこい猫ではあるが、僕も妻がやるように首の周りに直次郎を巻いて「猫マフラー」とかやっていたら頭を引っかかれたことがある。あとこいつの猫パンチはちょっと痛い。