僕は髪型を変えていない。相変わらず鋭利な刃物の如く、前髪が鋭くとがっている。
そして相変わらず、予約の取れない美容院に通っている。
しかし、僕の担当は相変わらずラテン系ではあるが髪の毛が爆発し、アラウージョからロナウジーニョになっていた。
店のガラスや受付の下などには、ファッションショーかなにかのポスターが所狭しと貼られていた。
僕は相変わらず寡黙なつまらん男を演じているが、ロナウジーニョは4回目を数える僕のご来店になれたのかやたらなれなれしくなっていた。
以前も書いたが、僕の美容師の接客論は、無駄口をたたかないと過剰な気遣いをしないである。お湯加減やかゆみそして、髪を洗っただけでお疲れちゃんなんてご老人扱いである。
無駄口防止法として無職、無趣味でとおしていたが、先日「今日は天気イイですけど、この後どっか行くんすか?」との問いに「犬の散歩」とうかつにも答えてしまった。
その言葉を突破口に、行き先や犬の名前など質問攻めにあい、犬種を聞かれたので、「ビーグル」と答えると「ハッ?」と聞き返されたので、「ご存知ないのですか?」と尋ねると、「いや、一応知ってますけど…」とはぎれが悪い。
一応とつけられた言葉にムカっときたその後、「いやーもっとオシャレな犬飼ってるのかなと思ったんで」である。
「ビーグルはダサいという事?」とややキレ気味に尋ねると、「いやーお客さんのイメージに合わないっすよ」と言われた。
僕に合う犬やオシャレな犬について質問攻めにあわせたかったが、無駄口をたたかれても相手の術中だと思い、グッとこらえた。
たしかにオシャレスポットである堀江や神戸居留地や北野に、ビーグルは映えないかもである。しかしビーグル飼いとしてこのままでは…。
ビーグルのオシャレ知名度を上げるため、たまにはナッティを連れて堀江にオシャレ首輪でも見に行くかな。
カットが終わり、受付でお金を払おうと受付で待っているときポスターに目が奪われた…。
カットモデルの髪を切る男性の後姿…この腹立たしいおケツプリプリ感は、こデブの店長ではないか!目の前の店長の後姿を確認、相変わらずおケツにホルモン注射をぶち込んだような写真と相似のプリけっつであった。
店を出て、店のガラスにはビダル・サスーンのように、カットモデル達に囲まれたこデブ店長の写真であった…。このショーの観客は、素晴らしきカットよりもおケツが気になったに違いない。