土曜日、ユウコは友達達とセレブに船上から花火大会を見に琵琶湖へ、僕はお仕事から凱旋後、ナッティと連れ戦場とかしているであろうオヤジの夏フェス会場に向かった。
昼にFMで、KISSのライブだけで800発の花火が用意されてると報をうけ、自転車にまたがり、ナッティをリードでひきつつもいざ、海を目指した。
曇り空で涼しく、ナッティも嬉しそうに走っていた。太陽が沈みゆく中チャリで海を目指す光景は、鉄腕ダッシュのようであり、自転車乗りの心に火をつけた。
道中、アスファルトジャングルばかりもあれなんで、河川敷きルートを選択、公園に着く頃どこからともなく音楽が・・・。ナッティもソワソワである。
まさかこの距離からライブの音が?と思ったのもつかの間、どう聴いてもこのリズムはレゲエ、オヤジの夏フェスにレゲエはない。土手を登ると夜店らしい催しに小さなステージであった。
ナッティは音に反応し、常軌を逸しあらゆる方向に逃げようとパニックであった。しかたなく海をあきらめ敗戦の帰路につこうとするも、ナッティは興奮がおさまらずであった。
あまりの恐怖にとにかく早く帰りたいのか、帰巣本能が過敏になっているのか民家すきまや工場の裏など道無き道を行こうとリードを引っ張り、僕が帰り道をナビするも動かざること山の如しであった。
しかたなくナッティを自転車の前カゴに乗せると、まんざらでもない様子で大人しくツーリングを楽しむようであった。
音も聞こえなくなりゆっくり帰ろうとカゴから降ろすと、怖ささめ止まぬのかシッポを巻きゴッティンガムに向かい走り出した。恐怖からかオヤツや一滴の水も欲しがらずひたすら走った。
道中、車が1台がやっとの細い路地、遠くから悲鳴と後ろから獣の気配が…。振り返ると顔の位置が僕の胸ぐらいの超大型犬が!猛ダッシュで襲いかかってきた!
次の瞬間、僕は無心で気づくと、アクロバットな雑技団のキメのポーズの如く、自転車を上に両手でかかえあげ、汚い言葉をあびせていた。僕の気迫に負けたのか、超大型犬は飼い主の方へと引き返していった。
あまりの出来事に記憶がハッキリしていないが、おそらく走る僕らを見つけ、飼い主をふりきり追いかけてきたのであろう。
その後ナッティは怖がりつつも、僕をリーダーと再認識したのかべっとりであった。気づけば腰が痛かった。オヤジの夏フェスに勝るとも劣らずの熱い夜であった。