土曜日、ユウコはOLグルメ旅で本町にフレンチを、僕はお仕事であった。久しぶりに夜に予定があったが、何だかんだでモチベーションもテンションも上がらずでドタキャンであった。
楽しく遊ぶにもコンディションは重要である。先週は仕事が忙しく、さらに愛車のタイヤがパンクなど目まぐるしさにクラクラで、騒ぐよりもやすらぎを選択した。
が、ナッティのお散歩は別腹である。どんだけ疲れていようと一目見ると、モチベーションもテンションも自然と上がるものである。
この日は素晴らしい晴天、仕事を気合いで昼過ぎに終らせ凱旋、向かった先は『Mt.イワキ』であった。
ユウコが花粉症の為、しばらく山から遠のいていたが、せっかくのコンビだし、山登りを選択、時間も時間の為、普段のお散歩グッズに飲み物程度、気温も高かかった為、Tシャツにトレーナーの軽装備で挑んだ。
が、ナメ過ぎていた。小一時間で到着、日が当たっている場所は暖かいが、日陰は寒かった。
しかしここまで来て引き返すわけにはいかず、登っているうちに暑くなるであろう、と楽観していた。遭難者にありがちな思想である。
時間が遅いからか人は少なく、帰り仕度の人々を横目に登って行った。今回時間が無い為、最短距離で頂上を目指す急急の道を選択、ガイドにはかなり急だが45分で登れるとの事であった。
時刻は4時、往復で5時半過ぎには戻ってこれる、ど素人のどんぶり勘定である。結構無理があるなと思いつつ、やれば出来る、と根拠の無い信念を強く持ち登って行った。遭難者にありがちな選択である。
が、登る事5分、あまりの急な坂に息が上がり、喉がカラカラ、声が出なくなる。足もすでに重く棒になり、4足歩行で登ろうかと言うほどの急勾配であった。
ナッティもさすがに暴走する余裕は無く、ヘラヘラ笑いつつ頂上を目指した。時間が無い事もあって、とにかく上を目指した。
想定外の急な坂であったが、だんだんと慣れてきてようやくペースをつかみかけた頃、アナウンスが流れた。きっとそろそろ帰りをと誘発する放送であるが、聴く耳は持たずであった。遭難者にありがちである。
途中ですれ違う人が1人、この人が僕らの最後の目撃者かも、と思いつつ上を目指した。登っている最中、遭難して救助された時「ナッティと2人で犬★オヤツを分けて飢えをしのぎました」と記者会見する自分の姿が何度もよぎった。
が、いらん心配であった。終ってみれば30分、間違いなくレコードのタイムで頂上に辿り着いた。
ナッティは誰もいない焼けこげたススキノ大通りを嬉しそうに走り回った。まだこんな余力があろうとは、恐るべしハウンド根性である。
しばし景色と自分にうっとりした後、すぐに下山へ。下りはスーパーマリオの如く飛び跳ねながら下った。
道中なんども帰りたくない、と抵抗したが、帰れなくなるぞ、と説得しつつ急いだ。山は暗くなるのが早く、日陰はもうすでに薄暗かった。
そして下りも25分、またしても記録であろう。結局1時間チョイの登山であった。
帰りたくないとゴネていたナッティも、車に乗り込むとバタり、であった。帰りも小一時間、結局車での移動時間の方がはるかに長かった。
凱旋後晩ご飯の後いつも通り犬★ボールで遊んだ。ナッティの体力はどんだけなのであろうか。
また犬バカな1日であったが、久しぶりにうれしそうに山を駆け回るナッティに何よりであった。山の無い町に育ったナッティであるが、やはり山が大好きである。少し遠いがまた記録をぬりかえに山に訪れるとしよう。