先週から今週にかけて、親会社から新人が研修に我が社にやって来ていた。僕が今回担当したのは、男性の手越(仮名)、続いて女性の菊川(仮名)の2本立てであった。
共に1流大卒の本社採用、狭き門を撃破したエリートである。普段パソコンで億千万もの数字にガンを飛ばす生産部門の彼らに、1本単位の販売の感動を共感してもらいたくであった。
最初はお高いイメージであったが、話すに連れ手越の純粋さに壁は崩れ落ちた。後日の菊川もそうであるが、真剣に話を聞く姿勢やメモを取る姿勢に僕の指導も熱くなった。
読みもせずハンコを押されるだけのレポートをやめさせ、客先とのつながりや肌で感じる現場の空気を思いっきり吸わせた。彼らも最初こそモジモジするも、僕の大げさな演技指導に応えはじめた。
生で客先に言われる「がんばりや」の言葉に、彼らは心から感動したようであった。これから先いくつもの社会や会社の壁にぶちあたるであろうが、この感動を胸に突き進んで欲しいものである。
彼らの姿勢や話しに、僕も勉強させられる事も盛りだくであった。商品知識などはもちろん、生き様など世代を超えていい刺激になった。ペットブログだけに動物の話しを1つするとしよう。
今年1年は子会社や全国の支社や各部門を研修して回る彼らにとって、まず最初の試練は酪農家での乳搾り研修である。
乳搾りと言っても、牧場や農場公園などで家族連れやカップルでワイワイ体験、みたいなレジャーではなく、ほとんどが糞尿の清掃である。時には口内に含むほどクソまみれの数週間である。
ごくごく一部のマニアなら、ハイ喜んでかもだが、エリートの彼らにとっては屈辱的であったであろう。しかも何も無い山奥で、働く人の大半が中国人で言葉も通じずイジメられる事もしばしだったらしい。
元気も食欲もなく、気が狂いそうだったらしいが、3日たった頃世話していた牛が少しずつ可愛く思えてきたそうだ。最終日には別れを惜しむほど愛着がわいていたらしい。
スケールは違うが、ナッティを飼い始めた頃、うんこりんや犬臭に鼻を曲げていた僕が、次第に変わった事にかぶり、少しだけ共感できた。
そして彼らの純粋さについ心のヒモがゆるみ、普段ならお金を貰ってでもしたくない恋の相談も聴く耳をたててやった。
1流大卒だろうと10年遅れ高卒だろと、若かろうと歳喰っていようとそれこそが最大のエナジーである。手越には恋のアシストまでしてやったからか、わが支店のボスに、僕を名指しで絶賛していたようである。
酪農家体験には及ばずとも彼らに、何らかのバイブスやきっかけをつくれたであろう。某国の坊ちゃん首相も僕の研修を受ければ、少しでも庶民の気持ちがわかるかもである。
さて来週は僕自身の研修である。彼らのように素晴らしい事や素晴らしい人に出会えるのであろうか。